2006年度作品。韓国=日本映画。
恋人のジウが自分の容姿に飽きてしまうかもしれない。そんな不安に襲われたセヒは整形に踏み切り、自分の顔をつくりかえるため、ジウの前から姿を消す。捨てられたものと思い、傷付くジウのもとに半年後、新しい女が現れる。それこそ整形を終えたセヒだった。
監督は「サマリア」のキム・ギドク。
出演は「スカーレット・レター」のソン・ヒョナ。ハ・ジョンウ。
「うつせみ」「弓」と最近のギドク作品はずいぶんわかりやすくなってきたが、本作もストーリー自体は明快である。ひと言で語るなら整形によって顔の変わってしまった女性の愛の行方を追うといった内容だろう。
ヒロインの女性は嫉妬深く、恋人が自分をちゃんと愛してくれているか不安で仕方がない。自分の顔に飽きてしまったのではないか、と不安になり、恋人の心をつなぎとめるために整形に踏み切る。新しい顔になった彼女は、素性をかくしたまま恋人の心をつかむが、それは同時に恋人が過去の自分を捨てることだと気付く。
映画のあらすじは以上のような感じだが、こう書くとずいぶん奇抜でやりすぎだろう、という気もしなくはない。実際見ている間、その設定に違和感を覚える部分のあったことは事実だ。
それに、韓国映画特有の過剰な感情の描き方にもうまくなじめず、映画そのものに距離を感じてしまったきらいがある。
しかしその不安定な愛の描写は、なかなかおもしろいものがある。
より男に愛されたいために顔をつくりかえたのに、古い顔の自分が捨てられるのも許せない。はっきり言って、そんなヒロインの心理は矛盾もいいところで、独善もはなはだしいのだが、その矛盾の描き方が実に上手いと思う。
たぶん彼女自身、自分が何をどうしたいのかわかっていないのだろう。それだけに混乱した感情が見ているこちらにまで伝わって来るような気がした。
しかしそこまで愛を求めてきた女が、ラストで顔を変えてしまった男を見つけられないところは皮肉が利いていて、非常にすばらしい。
自分はあくまで愛を求めるのに、相手の愛には応えられることができない。愛ってやつの厄介な側面を見せられた気がした。
そういうわけで本作のテーマ性は個人的には好印象なのだが、演出等の面で気に入らない点も多かっただけに、手放しで賞賛できそうにはない。
際立った美点があると思っただけに、なんとも惜しい結果になったのは残念だ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
制作者・出演者の関連作品感想:
・キム・ギドク監督作
「うつせみ」
「魚と寝る女」
「弓」
んーーー、イマイチ。。このストーリー展開についていけないし、ヒロインの情念にもドン引きしてしまった。。。あたしだったら、このヒロインから逃げるために整形するかな(笑)。映像とか雰囲気はいいんだけど、脚本に無理があるよね。
にしてもさー、キム・ギドクの描く女性ってどー思う? 私は全然共感できないし、リアリティにも欠ける気がする。「こんなおバカな女、いねーよ」っていつも思うし(笑)。ギドクのマッチョな女性観を何とかしてほしい(ってか説教してやりたい・笑)。
ストーリーは確かにやりすぎですよね。いい部分はあるけど、ついていけないって言う人が出ても、仕様がない気もする。
結構、前に見たんで、忘れてる部分が多いんですけど、ヒロインが少しこわかったような気がします、いろんな意味で。もうこれなら、ヒロインから逃げるため、整形したくもなりますよ。
>「こんなおバカな女、いねーよ」っていつも思うし(笑)。
ああ、いまとなって言われればそう思う。でも僕は、この女こえーな、って思いが強すぎて、おバカとかってまでは気が回らなかったです。
むしろ僕はたまに、男のキャラがおかしいんじゃねえか、って思うときがあるんですけど。。同性には、見方がやっぱりきびしくなってるのかなぁ。それともキム・ギドクっていう人は、どんな人間からも、変じゃねえの、ってつっこみたくなる程度に変態だってことなのか。
なんかさー、ギドクの映画を観てると、きれいな女から一途に情熱的にすさまじい情念でもって愛されたい、っていう男のファンタジーを感じるんだよねー。どんなファンタジーを夢見ようが個人の勝手だけど(実際、それはギドクの個性になってる気がする)、それを女の視点から描かれると「ちょっと違くね(怒)?」って思う。
にしても「男のキャラが違うんじゃねえか」って意見には笑いました。ギドクって、基本的にゆがんで倒錯してんですよねぇ。ま、そこがおもしろいんだけど。
この意見、すさまじく目からうろこでした。若干感動すらしましたよ。
ギドクって、基本的に何描くにしても、極端すぎる部分があるんですよね(それもまたギドクの良さだけど)。だから毎回、徹底的にやってんな程度にしか考えてなかった。でも、男のファンタジーって言われれば、そういう見方もできますよね。
僕ではその考えに一生思いつかなかったです。人の意見って、本当におもしろい。